アニメしか観ません

死ぬまでオタク

ナージャ・アップルフィールドにとって視聴率よりも大切なこと

 ここ2回に渡って「人気」と「実力」について言及してきたものの、アニメ作品にとって「人気」と「実力」がいったいどのようなものなのか、「人気」と「実力」を決める尺度は何か、相対主義なのか絶対主義なのか、こういった疑問に対して何の答えも出なかった。

 前2回でおれは「人気」イコール「売れ行き」であると安易に定義してしまった。あえて「売り上げ」ではなく「売れ行き」という書き方にしたのは、単に2ちゃんねるの売りスレに対するやっかみ、それに加えて数字だけが尺度になることへの疑義によるものであった。

 

視聴率とこどものおもちゃ 

 かつてテレビアニメ番組の「人気」をはかる指標として、視聴率が用いられた。とくにゴールデンタイムないし土日の18時台に放映されるアニメに対し視聴率はシビアなものさしであり、高視聴率を挙げた番組と安定した視聴率を保った番組は長く継続する傾向にあった。
 

 しかしながら「ゴールデンタイムないし土日の18時台に放映されるアニメの人気をはかる尺度は視聴率であり、視聴率によって番組の継続は左右された」という記述では満点解答とはいえず、「関連商品の売り上げ」というもう一つの数字が、テレビアニメの命運を長らく握っていた。とりわけロボットアニメと魔法少女アニメにとっては命綱のようなもので、80年代にゴールデンタイムから夕方枠および日曜午前(ないし14時台)あるいはネットワークが未整備の弱小局であったテレビ東京に「移民」し始めたという事を鑑みれば、もはや「マーチャンダイジング」は放映枠の垣根を超えた死活問題であった。

 
明日のナージャ』の蹉跌

 おまえは『明日のナージャ』というアニメを覚えているだろうか。2003年度にABC朝日放送製作でテレ朝系で全国放送された日曜朝の女児を視聴対象としたテレビアニメ番組だ。『おジャ魔女どれみ』シリーズの最終作『ドッカ~ン!』の後番組かつ『ふたりはプリキュア』の前番組である。ということは『夢のクレヨン王国』開始以降の同枠のアニメでもっとも短命だったアニメということになる。
 

 短命だったという事実は、『明日のナージャ』という作品にとって、かなり不名誉な意味を帯びたものと化した。主演の小清水亜美は放映終了数年後に『笑っていいとも!』に出演した際に共演者との実績の比較でかなり晒し者に近い扱いだったという印象を視聴者とオタクに与え、「(小清水を)もう許してやれよ」というネットスラングが2000年代終盤にかなり拡散していた*1
 負の意味合いでは「商業不振」ももっとも重要なキーワードの一つであった。視聴率面でもだいぶ関Pは「(低迷に)あえいでいた」ようだが、それよりも重要なのはおもちゃの売れ行きの深刻な落ち込みだったはずだ。視聴率と玩具の売上高の具体的な数字に踏み込む勇気を今回は節約しておくが、おまえも知っている通りこの枠は長年バンダイが提供してきており、「おもちゃが売れない!」というバンダイの悲鳴が、視聴率面での苦戦に対する虚ろな感情をはるかに凌駕する勢いでおれたちの耳に鳴り響いていた。

 
 そもそも関Pが『明日のナージャ』という題名にまつわる続編アニメをどの程度まで構想していたのか、あるいは『明日のナージャ』のような路線を長期展開(具体的な数字を出すとすれば4年以上……)するつもりがそもそもあったのか、まったく部外者であるおれにはわからない。『夢のクレヨン王国』以降もっとも短期間のシリーズ展開であったという事実と、関Pに代わり後番組の『ふたりはプリキュア』から鷲尾天がプロデューサーになったという事実が残っているだけだ。

 

明日のナージャ』とは何なのか

 で、なぜ突然『ナージャ』を引き合いに出したかというと、視聴率だけでなく関連商品の売れ行きがいかに重要であるかということを例示したかったからだ、というのは3割は嘘で、「オープニングとエンディングのクオリティ鬼だったよなあ」「スタッフの名前で永久に名前遊びできるよなあ」という不埒な考えと、ただ単に『明日のナージャ』というアニメが21世紀以降の全日帯アニメ――言いかえるならば、深夜枠と反対に多くの視聴者に開け放たれたアニメ――のなかで「短命だった」という意味合いを超越して「浮いた存在である」ということを主観的に強調したかったのが、残りの3割だ。ちなみにこの年(2003年)の全日帯アニメの中で、もう一つだけ『ナージャ』のポジションに近かったアニメ番組を挙げるとすれば、『探偵学園Q』1択である。

 

 

※2010年代で「浮遊した存在」の全日帯アニメをひとつだけ挙げるとすれば、個人的には『ビーストサーガ』を推奨したいと思う。

*1:ちなみに小清水亜美は2011年度のプリキュアである『スイートプリキュア♪』で同枠における2度めの主演を果たし、いわば「名誉挽回」といった形になった。